それだけじゃないだろ日本人!
土曜日の15時、ほぼ満席の池袋シネマサンシャインで『この世界の片隅に』を見てきた。民放ではプロモーションできないらしいけど、テレビ見なくったってネットの口コミでこれだけ話題作になれる時代なのだ。
13回見ましたとか、クラウドファンディングでプロモーション資金を集めようとか、とにかく絶賛の嵐だけど、ぶっちゃけこの映画がヒットしていることに懐疑的だ。良さを理解したくて、絶賛している人たちの感想を読んでたんだけど、今朝テレビで「周作さんとすずさんが喧嘩しながら帰るシーンが、、、」まで話して言葉を詰まらせて泣き出した人がいて、いよいよ自分の感性が心配になってきた。まずは箇条書きで気がついたこと、引っかかったことを書いてみる。
思ったこと
- 料理のシーン
とても丁寧で見ていてほっこりした。 材料を読み上げたり、手描きのかわいいメモだったり、 いい絵本を読んでいるような感じ。『コクリコ坂』 の料理シーンに通じるものがある。のんのナレーションととても合ってた。(この1.00分あたりとても良い)
- 周作さんのお姉さん
おしゃれが好きで、都会に憧れてて、街の時計屋の店主と恋愛結婚したけど旦那が子ども残して早死にして、嫁ぎ先とうまくいかなくて出戻る。気が強くて言葉に刺がある、テンプレみたいなキャラクターで一番行動や発言を予測できた。けど一番人間らしかったし、だからか一番会場から笑いをとったキャラだった。いま思えば、21世紀の私たちに近い考え方と性格の持ち主だったのかも。面倒な性格ゆえの生きづらさにも共感したのかな。
- すずさん
お姉さんに対してすずさんは、(ぼんやりしているからか)全然行動とか発言が読めなかったな。すごく可愛らしい人だけど、水原さんと一夜を過ごした時の色っぽさとか、玉音放送を聞いた時の怒りとか、いい意味で裏切ってくる。ただ個人的に、顎にほくろのある人は色っぽいと思ってたんだけど(安野モヨコ『さくらん』の粧ひとか)、すずさんは全然だったな笑(このツイートのすずさんは色っぽいね)
【祝】第38回ヨコハマ映画祭にて、映画『この世界の片隅に』が作品賞と審査員特別賞を受賞!!また、2016年日本映画ベストテンでは、錚々たる映画をおさえ第1位に選ばれました!
— 『この世界の片隅に』11/12(土)公開 (@konosekai_movie) 2016年12月3日
▼詳細は→ヨコハマ映画祭HPへhttps://t.co/GHQP3t47Nh#この世界の片隅に pic.twitter.com/6p6RuLwJw6
- 右手
すずさんが、呉を襲う爆弾の雨を見ながら「 手元にノートがあれば」みたいな台詞を言うシーンは、そこで「この人が見る世界は絵の材料なんだ」「 世界を自分が絵を描く前提で見ているんだ」と思った。だから「 右手を失ってからの世界が歪んで見える、 左手で描いた絵みたいに」につながってくるんじゃないかな。
- 夢
周作さんとのデートで、橋の上で話してた「選ばなかった選択肢はすべて夢」ってくだり、よかったな。今ここに生きていることが現実だけど、同時に過程でしかない。うろ覚えだけど、自分の中ですとんとした。
- カウントダウン
あの日に向かって、カレンダーがめくれて、空襲がどんどん激しくなって、、、わかっているけどハラハラしてしまう。(追記:しおたんさんがすごくいいこと言ってた
1945年の8.6広島に原爆が落ちるのを私たちはみんな知ってる。
— 塩谷 舞(しおたん) (@ciotan) 2016年12月7日
2011年の3.11に震災が起こることを私たちはみんな知ってる。
その事実を知った上で、訪れるべきタイミングを「待つ」物語はとても怖いんだけど、今思うと #あまちゃん は「待つ」以上の物語を描いてくれていた
よくわからなかったこと
子どもできたんじゃないの?
結局1年くらいの間の出来事だから進展もあまりないのかも。って思ってたら宇多丸がちゃんと見れば意味がわかるって言ってたからもう1回見ないとかな、、、(公式サイトにある「すずさんの生きた時代」っていう年表が、実際の歴史の年表と一緒に見れて、ほどよいネタバレ感があってよい)
終戦後、妹から父親と母親?が死んだって知るとこ
すずさんの反応がすごく淡白で、腑に落ちなかった。すでに知ってたの?
→原作読めば全部納得できるんだろうか。誰か教えて。
やっぱり、ネットに氾濫する「日頃に感謝」系の感想にはどうしても納得できない、そういう理由でこの映画が好評価を得ていることを認めたくない自分がいる。「それだけじゃないだろ日本人!」みたいな。むしろみんなそんなに日々感謝してないの?ってなる。
最大限譲歩して、感想をポジティブに言おうとすれば、この映画を通して、戦争への関心というか、意識を少しでもする人が生まれたならそれはそれでいいのかな(惰性)ってコメントを一緒に見に行った人に言ったら、「ヤバイ。その感想あえっててポジティブに言うならねってネガテイブさを感じる」って言われて吹いた笑
唯一絶賛してる勢と同調できることがあるとすれば、『あまちゃん』ファンだし能年玲奈にお金が入ってくれればいいってとこかな。
一言で言えば、情報量がすごい。
『君の名は。』の新ビジュアルが解禁となりました。都内某所の階段で瀧と三葉がすれ違うこのビジュアルは、「出会うはずのない、二人の出逢い」という物語のテーマに合わせ、特別に描きおろされたオリジナルイメージビジュアルです! #君の名は。 pic.twitter.com/lNW0HHIkul
— 映画『君の名は。』 (@kiminona_movie) 2016年6月23日
3ヶ月前、Aから売切れ続出と聞いて、見てもいないのにとりあえず買ったプログラムをようやく開封できる。別に映画館がカップルで7割くらい埋まっていようが、特等席の一番後ろど真ん中の両脇がカップルだろうが、ヨージのコートで身を包んだ「ザ・喪女」って格好だろうが気にしない。14年ぶりの降雪が報じられた11月の夜、私は見る見る詐欺の後ろめたさからようやく解放され、『君の名は。』を見たっていう資格を手に入れた。
まず忘れないうちにメモしておきたい、鑑賞中に頭をよぎったこと。
口かみ酒を見て思い出したのは『もやしもん』だし、現在の瀧と3年前の三葉が入れ替わってるってわかった時に思い出したのは宮部みゆきの『蒲生邸事件』とか『永遠のゼロ』だし、お互いのルール決めたりするのは『思春期ビターチェンジ』だし、彗星が落ちた糸守のシーンを見て思い出したのは『東のエデン』だったし、「もう一度君に会いに行く」みたいなのは完全に『時をかける少女』だし(作中に「未来で待ってる」ってセリフがあっても全然違和感なかったよね)、誰かれ時に再開した二人は『インターステラー』の本棚越しのマーフィーとパパだった。大丈夫、覚えてる。
それから、畳に置かれた組紐、紅葉、新宿の街、全部本物(写真?)かと思うほど綺麗に、正確に描写されてた。トレースとかを駆使して、写真をその場に持っていけばピタリと重なる、とか言われてるけど、これからのアニメってそういうの目指すの?って疑問が頭から離れない。それが新海作品なのかもしれないけど、違和感を感じずにはいられなかった。正確さというか、もはや正しさでは?
とか言いながら、23年以上住んで嫌いになりつつある東京の街がめちゃくちゃ綺麗に描かれてて(瀧のアパートの玄関を出たところから見える新宿と御苑とか)、私はこんな綺麗な街に暮らしているのかと感動した。確かに朝日を反射する高層ビルは綺麗だ。得した気分になる。吉祥寺でオールした帰りに震えながら始発をホームで待って、中央線で向かう新宿の街は眩しいほど美しいことを、私は知っている。
そして、RADWIMPSのPV問題。言うほどか?とは思ったけど、瀧とか三葉の気持ちとシンクロしそうってときに洋次郎の声が聞こえて萎えたっていうのはあった。ただ全体的に見たら、後々歌詞を見て「ああ、こんなこと言ってたんだ」「ここがリンクしてたのか」とか気が付いたくらいで、それは曲よりも映画に集中していたって証拠だと思う。「なんでもないや」の「嬉しくて泣くのは 悲しくて笑うのは 君の心が 君を追い越したんだよ」っていうのは、すごくよかったな。
あーあと最後に。三葉が入った時の瀧くんの声が気持ち悪い(褒)。神木くんすげーな。普通だったら文脈的に「仕草も相まって」とか書くんだろうけど、仕草以上に声から女子っぽさを感じた。
ハイ、映画館で観るには今更すぎた『君の名は。』の感想おわり!
「あの人は今何してるだろ」とか「日頃の感謝を」とか、10、20代はあまり持たない感想(少なくとも私は全く思わなかった)を父母世代を持ってるの面白かったな。それよりも私は「あ、これは『インターステラー』だ、『東のエデンだ』」とかいろいろ考えながら、情報量すげーなとか思ってた。 https://t.co/pkPprIxDNs
— さるみ。 (@srwtri_) November 28, 2016