地上233mとインフル
※今年4月末に行ったマカオの話です。
マカオに行ってきた。
ド派手な電飾のホテル、夜通しやってるカジノ、高級ブランドがずらりと並ぶショッピングモール、質屋、娼婦。
「『沈黙』のロケ地が見れるのか~」くらいの気分で行ったんだけど、キリスト教っぽさを感じたのは建物だけで、特別信者が多いって印象はまったく受けなかった。
(日曜日の朝にカテドラルに行ってみたけど、ミサの参加者はまばらだった)
逆に印象に残ったのは、2年前に行った香港人にも通ずる商魂のたくましさ。
アジア人のエネルギーみたいなもの。
なんせフェリー乗り場からホテルまでの道が、両脇ド派手なカジノ兼ホテル。
ギラギラした墓標みたいな高層ビル、馬車の像がしゃちほこみたいについてるホテル、テーマパークのスタッフみたいなふざけた格好のボーイ(※ポルトガルの伝統衣装)。
街全部が札束でできてるみたいだった。
一緒に行ったのは中学からの友人。
出発前に、数年前にそいつと行ったパリ旅行のアルバムを見直してみた。
嗚呼、花の都!シティー オブ ライッ!
大学1年の冬、初めてのパリへ5泊7日の旅。
1日目に猛吹雪で凱旋門の真下で滑って転んだこと。
スリに警戒しすぎて、観光客に見られないようお互い10m以上間隔をあけて歩いたこと。
エッフェル搭の下で記念撮影中に割り込んできたヒッピーにブチぎれたこと。
睡眠中の歯ぎしりを指摘されたこと「あの音なに?」
どうしても見たくて行ったモンサンミッシェルでは、片道4時間のバス移動と、座りすぎてお尻が痛くて仕方がなかったこと。
お土産をぜーんぶ羽田空港の関税の申告書を書くテーブルの下に置いてきたこと。
帰国後、facebookにあげた写真は綺麗なものばかりだけど、覚えているのは写真に収めていないことばかりだ。
今回のマカオ旅行でも、一番印象に残ったことはiPhoneには残ってない。
(一切の手荷物が持ち込み禁止だったから当たり前なんだけど)
簡単に言うと、海風あおられながら地上233mを歩いた。 ※もちろん命綱付きだけど(しかも2本)
マカオの街を見下ろせる最高のロケーションにいながら、私の頭の中はドラマや映画で見た死体のイメージでいっぱいだった。
同時に、思いつく限りの「万が一」を考えた。というか、それ以外考えられなかった。
万が一、ロープが切れたら。
万が一、心臓発作を起こしたら。
万が一、地震が起きてタワーが倒れたら。
万が一、突風が吹いて足元をすくわれたら。
万が一、友人の気が狂って突き飛ばしてきたら。
無事地上へ帰ってきてホッとしたなんてもんじゃない。
むしろめちゃくちゃ興奮してた。
べろんべろんに酔っ払った時みたいに声はデカイし、やたらTシャツは湿っぽいし、心臓はバクバクしてる。
こんなに万が一の可能性を考えたのなんて初めてだったし、結論として自分は絶対に死にたくないんだってわかった。
怒ったり落ち込んだりモヤモヤしたり、自分はとことんネガティブなんだと思っていたけど、
それが嫌ですべてを投げ出すって選択肢をとることは絶対にないだろうと漠然と思えた。
はー楽しかった。
でね、帰国したら2日後にインフルでぶっ倒れた。
地上233mの恐怖なんて吹っ飛ぶほど、39度の熱は辛かった。